
ワイヤーハーネスとは?構造・圧着(かしめ)の仕組みと断面での圧着状態の確認
ワイヤーハーネスの電気的な信頼性を左右するのが、電線と端子をつなぐ圧着(かしめ)です。外観検査だけでは分からない圧着具合を、断面で確認できる状態にします。
最終更新: 2026年10月1日
ワイヤーハーネスとは
ワイヤーハーネスとは、複数の電線を束ね、端子やコネクタを取り付けて、機器内の配線としてひとまとまりに組み上げた部品です。電源の供給と信号のやり取りを担い、自動車・産業機器・家電など、電気で動く製品のほぼすべてに使われています。 とくに自動車では、エンジンルームから車室内まで多数のワイヤーハーネスが張り巡らされ、走行・安全・快適装備の動作を支えています。振動・温度変化・湿度といった負荷が常にかかるため、1本1本の接続部の信頼性がそのまま製品の信頼性につながります。
ワイヤーハーネスの構造
ワイヤーハーネスは、大きく次の要素で構成されます。 ・電線:細い素線を撚り合わせた芯線(導体)と、それを覆う絶縁被覆 ・端子:電線の端に取り付けられ、相手側との電気的な接点になる金属部品 ・コネクタ:端子を収容し、着脱を可能にする樹脂部品 ・外装材:テープ・チューブ・プロテクタなど、束を保護・固定する材料 このうち、電線と端子の接続に広く使われているのが圧着(かしめ)です。ワイヤーハーネスの電気的な信頼性は、この圧着部の出来に大きく左右されます。
圧着(かしめ)とは
圧着とは、端子のバレル(電線を抱え込む部分)を工具やプレス機で塑性変形させ、芯線を機械的に締め付けて接続する方法です。はんだ付けと違って熱を使わず、条件管理された工程で安定した接続を量産できるため、ワイヤーハーネスの標準的な接続方法になっています。 端子のバレルは一般に2か所あり、役割が分かれています。 ・ワイヤーバレル:芯線を直接かしめ、電気的な接続を受け持つ ・インシュレーションバレル:絶縁被覆ごとかしめ、振動や引張りから接続部を守る 圧着部は、素線同士・素線と端子が強く密着してこそ、低い接触抵抗と十分な保持力が得られます。
圧着の良否はなぜ問題になるのか
圧着は塑性変形による接続なので、「どれだけつぶすか」の加減が品質を決めます。 ・つぶれ不足:素線間や素線と端子の間に空隙(ボイド)が残り、接触抵抗が上がります。振動で緩みが進むと、発熱や断線につながります。 ・つぶれすぎ:素線が切れたり断面積が減ったりして、引張り強度が低下します。 ・その他の不良:被覆の噛み込み、素線のはみ出し、バレルの割れなど。 やっかいなのは、これらの不良の多くが完成直後の導通検査では問題として現れにくいことです。組み付け時点では導通しているのに、市場で振動や温度変化を受けるうちに接触抵抗が上がり、不具合として顕在化するケースがあります。
圧着部の検査方法の比較|外観検査で分かること・分からないこと
圧着部の検査にはいくつかの方法があり、それぞれ確認できる範囲が異なります。外観検査やクリンプハイト(圧着高さ)測定は非破壊で全数管理に向きますが、いずれも外から見える情報しか得られません。バレルの内部で素線がどうつぶれ、どこに空隙が残っているかは、断面を出して初めて分かります。
| 検査方法 | わかること | 限界 |
|---|---|---|
| 外観検査 | バレル外形・被覆噛み込み・素線はみ出しなど表面の状態 | バレル内部の密着・空隙は見えない |
| クリンプハイト測定 | 圧着部の外形寸法(つぶし量の管理値) | 内部の素線のつぶれ方・空隙は分からない |
| 引張試験 | 端子と電線の保持力 | 破壊試験。内部状態や電気的な良否は分からない |
| 断面観察(断面研磨) | 素線のつぶれ・空隙・偏りなどバレル内部の圧着状態と、圧着率等の寸法 | 試料を切断する破壊検査 |
断面で圧着状態を確認する
圧着部を樹脂に埋めて狙った位置で研磨し、断面を出すと、バレル内部の状態がそのまま現れます。断面には電線の軸に直交する「横断面」と、軸に沿った「縦断面」があり、確認できる項目が異なります。 ・横断面:圧着不足(素線が元の形状のまま隙間が残る)、シーム部の開き、バレルの重なり・底突き、素線の偏り、巻き込み不足、背バリ、端子の亀裂 ・縦断面:セレーション部への電線の掛かり不足、セレーション形状の不良、ベルマウスの偏り さらに、圧着率(圧着前後の導線断面積の比)や巻き込み率、クリンプハイト・クリンプワイドといった寸法も断面から測定できます。圧着部の断面評価は、社内規格や客先規格で基準が定められていることも多く、工程条件の妥当性確認や不具合調査の場面で使われます。かしめ部は硬い端子材と細い芯線が混在するため、研磨中に素線の脱落・変形が起きやすいうえ、素線間の空隙に研磨の削りクズが入り込んで刺さり・キズの原因になります。脱泡や再樹脂埋めで空隙に対処しながら仕上げる、作り込みが必要な部位です。弊社での断面出しの実例は、実績ページで紹介しています。
まずはご相談ください
「圧着条件を変えたので内部の状態を確認したい」「市場不具合の原因調査で圧着部を疑っている」「どの位置で断面を出すべきか分からない」といった段階からご相談いただけます。 圧着部を樹脂包埋で保持し、横断面・縦断面での不良の有無の確認から、圧着率・クリンプハイトなどの寸法測定まで対応します。良否の判定基準はお客様の規格に応じます。引張試験や高温放置・サーマルショックなどの信頼性試験データが必要な場合も、提携会社と連携して提供した実績があります。試料の状況・確認したい内容をお知らせください。
