
引け巣とは?引け巣とクラックの違い
引け巣は鉛フリーはんだが固まるときにできる空洞で、クラックとは成り立ちも見え方も違う。X線や断面で「クラックか引け巣か」を見分ける観点を、実際の断面写真で整理します。
最終更新: 2026年9月11日
引け巣とは
引け巣(ひけす)とは、溶けたはんだが固まるときに、体積が縮んだ分を液体で補いきれずに残る空洞のことです。鋳物の内部にできる「巣」と同じ原理で、はんだ接合部でも起こります。 見た目はボイドと紛らわしいものの、成り立ちは別です。ボイドはフラックスのガスや水分が抜けきれずに閉じ込められた気泡で、断面では角の丸い円形に見えます。引け巣は凝固収縮でできるため、輪郭が不規則で、樹状の枝分かれや細い筋を引くことが多い。 この引け巣は、共晶はんだ(Sn-Pb)ではあまり出ず、鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cu系)で目立ちます。
なぜ鉛フリーはんだで引け巣ができるのか
鉛フリーはんだで引け巣が出やすいのは、固まる温度が一点ではなく幅を持つからです。 Sn-Ag-Cu系のはんだは、冷えていく途中でまず初晶(主にスズ)が先に固まりはじめ、残った液が最後に低い温度で固まります。先に固まる部分と最後に固まる部分とで、固まる温度が違う。最後に固まる領域は周囲がすでに固体で囲まれていて、凝固収縮で足りなくなった分を液体で補給できません。その結果、縮んだ分だけ空洞が残ります。これが引け巣です。 共晶に近いSn-Pbはんだは、ほぼ一つの温度で全体が一斉に固まるため、収縮を補いながら固まりやすく、引け巣が出にくい。鉛フリー化で「固まる温度に幅がある」はんだが主流になったことで、引け巣は身近な現象になりました。
引け巣とクラックの違い
引け巣とクラックは、断面やX線で見ると混同されがちですが、成り立ちも見え方も違います。 一番の違いは、いつできるかです。引け巣ははんだが固まるとき(製造時)にできて、そこから広がりません。クラックは製品を使っているあいだの熱サイクルで、あとから入って進んでいく亀裂です。 見え方にも差が出ます。クラックは応力で割れた線なので、細く鋭く、はんだ接合部を横切るように一方向へ伸びます。引け巣は収縮でできた空洞なので、線というより幅のある不定形で、枝分かれや塊として見えます。X線では、引け巣は表面側が細くても奥がふくらんでいることがあり、細い線として写るクラックとは太さが違って見えます。
| 引け巣 | はんだクラック | |
|---|---|---|
| できる時期 | はんだが固まるとき(製造時) | 使用中の熱サイクル(あとから進展) |
| 原因 | 凝固収縮(体積が縮む) | 熱疲労による応力の繰り返し |
| 断面での形 | 不定形・枝分かれ・幅がある | 細く鋭い線・一方向に伸びる |
| X線での見え方 | 奥がふくらむ・太い | 細い線 |
| 進展するか | しない(その場にとどまる) | する(サイクルごとに伸びる) |
引け巣はクラックの原因になるか
では、引け巣があるとそこからクラックに育つのでしょうか。結論として、引け巣そのものはクラックの原因にはなりえません。引け巣は固まるときにできて、そこから進展することはありませんが、クラックは使用中の熱サイクルで進む、まったく別のものだからです。 そのため、断面に引け巣が見つかったとしても、引け巣単体をクラックと判定することはありません。引け巣とクラックは切り分けます。ただし、もしクラックが引け巣まで伸びていたら、その引け巣もクラックの一部(赤線)として引きます。赤い線がつながって剥離すれば、その接合部はどのみち電気が通らなくなるため、最悪を見越してクラックとして扱うのが弊社でのやり方です。
断面観察・クラック率測定での扱い
引け巣とクラックの区別は、クラック率を数値で出すときに実際に使われます。 クラック率は、はんだ接合部で想定される割れの長さ(最終クラック想定線)に対して、実際にクラックが伸びている長さ(赤線)の割合です。クラックが到達した引け巣は、前の節のとおりクラックの一部として赤線を引きます。ボイドも同じく、クラックとつながっていればクラックとして扱います。赤線がつながって剥離すれば、その接合部はどのみち電気が通らなくなるため、最悪を見越してクラックに含める、という判断です。クラックとつながっていない引け巣・ボイドは、クラックとは別のものとして計算から外します。 断面では引け巣・ボイド・クラックが同じ暗部として写るため、どこまでをクラックとみなすかの基準をそろえておかないと、同じ試料でも数値がぶれます。弊社は判定基準をそろえたうえで測定し、数値の根拠を説明できる状態でデータを提出します。
はんだクラックとは?クラック率の出し方を見るまずはご相談ください
断面に見える暗部が引け巣なのかクラックなのか判断がつかない、という段階からご相談いただけます。 引け巣とクラックを切り分けたうえで、クラック率を参考値として算出し、交換・対策・経過観察の判断にご活用いただける数値データをご提供します。数字があるほうが、社内説明や客先報告の根拠として通りやすくなります。 「どの箇所を観察すべきかわからない」「断面で何が確認できるか事前に知りたい」といった段階でも対応可能です。試料の状況・症状をお知らせください。 初回は1断面を無料で確認いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

